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ヅラが彼女にバレたとき
第一話
「パチッ、パチッ、パチッ」

  カウンセラーがヅラを取り付けていく音が耳元で響いている。

「パチッ、パチッ、パチッ、パチッ」

  残り少ない髪の毛がフサフサしたヅラで覆い隠されていく。

「痛くはありませんか?」

「いえ・・・・大丈夫です」

  カルセラーがヅラを着け終わり、私の頭から手を離すと・・・。

  目の前には、外ヅラだけが一変した自分の姿が映し出されていた。

「とてもお似合いですね」

「あ、ありがとうございます!  スッ、スゴイ!  これが本当に自分なのか?」

  私は別人のように変身した自分の姿に少々違和感を覚えながらも満面に笑みを浮かべた。
  ここは、某ヅラメーカーの個室。
  ついさきほどまで油ギッシュに光り輝いていた私の前頭部は、瞬時に十数年前のフサフサ状態に戻っていた。
  本来、増毛は不自然さをなくすために段階を踏んで少しずつ増やしていくのだが、あまり予算を割けなかった私の場合は段階を踏まずに一気に増毛するしかなかったのである。今までの私を知っている人が見ればあまりに不自然な増え方だが、初対面の人なら、よもやヅラとはわかるまいと思われるほどの出来具合。大満足である。
  これなら美女の目を誤魔化し、結婚に漕ぎ着けることができそうだ・・・鏡に映った自分を見ながら、私は思わず、心の中でこう叫んだのだった。

「帰ってこい!  私の青春!」

  私の髪の毛が心もとなくなってきたのはいつ頃だっただろうか?

  たぶん二十代の半ばにさしかかったあたりから除々に薄くなっていったのだと思う。そして三十代になり、気づいた時には前頭部が  テッカテカにハゲ上がっていた。私の前頭部ハゲはまるで「落ち武者」のように見えたらしく、社内の後輩たちは私を「オチムシャン」と呼んでいた。当初、彼らは密かにそう読んでいたのだが、私がそれを知っても怒り出さないのを見ると、だんだん目の前でそう呼ぶようになった。もちろん私はその言葉にムカついたが、当たっているだけに言い返せずに、「デヘヘ」と笑って誤魔化すしかなかった。しかし笑いながらも心は酷く傷ついていた。

  若ハゲに悩み始めたころから、女性に対しても臆病になっていった。髪があったころはなんとか女性と会話を交わすことができたのに、自分がハゲだと思うだけでこちらから声をかけることもできない。二十代前半までは暗くはなかった性格だったがハゲのせいでどんどん暗くなっていったのである。

  そのころ、そんな私でも一人前にある女性に恋をした。

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